HIBINO Note

【OTOTEN2026:特別インタビュー】峯岸良行氏が語る、HIBINO機材が魅せた「色付けのない素直な音」

作成者: Hiromi Matsushita|2026.07.28

去る6月19日(金)~21日(日)、東京国際フォーラムにおいて、国内最大級のオーディオとホームシアターの祭典「OTOTEN2026」が開催されました。ヒビノ株式会社 ヒビノマーケティング Div.とヒビノインターサウンド株式会社は、ヒビノグループとして共同出展いたしました。

(ブースの様子をレポートした記事はこちらから)

今回はブース展示だけでなく、OTOTEN内の様々な特別セミナーやイベントステージでもヒビノグループが取り扱うプロオーディオ製品群が活躍し、イベントの音響を支えました。

そこで本記事では、同イベントの特別セミナーに登壇されイベントステージでPAエンジニアをつとめられた峯岸良行さんにインタビューを実施。レコーディングエンジニア、作曲家、編曲家、さらには大学の准教授と多方面で活躍する峯岸氏にHIBINOが提供した機材のクオリティや使用感について、お話を伺いました。

『麻倉怜士が語る「魅惑のアナログレコード」45回転LP「ボヌール」の制作秘話と情家みえライブ』

こちらのステージでは、峯岸氏がPAエンジニアとしてステージ音響を担当されました。トークとライブを極上のサウンドで届けるため、HIBINOから以下のPAシステムを提供。その使用感などを峯岸氏に伺いました。


    • マイク: DPA Microphonesの楽器用マイク「4099 CORE+」をウッドベースおよびドラムのハイタム、ロータム、キック、スネアに使用し、ドラムのオーバーヘッド(L/R)には高音圧設計の「2012」を使用。ボーカル用にはプレミアムな音質を誇るスーパーカーディオイドの「2028」を採用しました。
    • ミキサー:ALLEN & HEATHのデジタル・ミキシングコンソール「SQ-7」を使用し、クリアでスピード感のあるミキシングを実現。
    • スピーカー: JBL PROFESSIONALの新製品スピーカー「SRX922」とサブウーファー「SRX918S」を使用し、会場の隅々まで豊かな音響を届けました。

DPA Microphonesのマイクについて

(左)楽器用マイクロホン「4099 CORE+」 (右)ボーカルマイクロホン「2028」

Q. 以前からDPAのマイクロホンをご存じだったとのことですが、どのような印象をお持ちでしたか?

以前から非常に良い印象を持っていました。何より色付けが少なく、楽器の音色をそのまま忠実に捉えてくれるマイクだという認識でした。加えて、4099シリーズは設置の自由度の高さ、堅牢性、そして楽器ごとに用意された専用クリップの多彩さも大きな魅力で、音質だけでなく現場での実用性まで含めて完成度の高いマイクだと感じていました。

Q. 楽器へのセッティングのしやすさ、収音のしやすさなどはいかがでしたか?

指向性が非常に自然で、距離に対するレスポンスも素直なため、セッティングの自由度が高いのが印象的でした。近接マイキングでも、少し距離を離しても音色が破綻しないので、楽器や現場の条件に合わせて柔軟にポジションを決められます。低域の要となるキックドラムについても量感が十分に得られ、収音において不安を感じる場面はありませんでした。

Q. 使用した後で、DPAのマイクロホンについての印象は変わりましたか?

変わったというより、以前から持っていた良い印象が確信に変わりました。ライブという一発勝負の現場で、質の高い収音が安定して行えたことは大きな収穫です。色付けのなさは、録音だけでなくPAにおける扱いやすさにも直結すると改めて実感しました。

ALLEN & HEATH「SQ-7」デジタル・ミキシングコンソールについて

Q. SQ-7を選んだ理由を教えてください。

96kHzネイティブ処理(XCVIコア)による音質の良さが第一の理由です。今回はライブPAと同時に、ハイエンドオーディオ機器を用いたハイレゾ音源やレコードとの比較試聴が行われる企画だったため、卓そのものの音質が厳しく問われる現場でした。そのうえで、コンパクトな筐体に必要な入出力がひととおり揃っている点も選定の決め手になりました。

Q. 初めて触るコンソールとのことでしたが、操作性・視認性はいかがでしたか?

初めての操作でも迷う場面はほとんどありませんでした。タッチスクリーンと物理ノブ・フェーダーの役割分担が明快で、信号の流れが画面上で直感的に把握できます。レイヤー構成も整理されており、本番中に必要なチャンネルへ素早くアクセスできました。視認性も良好で、初めての卓を触るという不安は早い段階で消え去りました。

 

 【Technical Note】 今回の現場で使用された「SQ-7」には、峯岸氏が熱望していた特定のプラグインを組み込んで運用するため、オプションのWAVES3カード「M-SQ-WAVES3」を搭載したカスタム仕様で提供しました。コンパクトながら、プロのシビアな要求に合わせて即座にシステムを拡張できる点も、SQ-7が現場で信頼される大きな理由です。 

 

JBL PROFESSIONAL 「SRX900シリーズ」について

デュアル12インチ・パワード・スピーカー「SRX922(新製品)()とサブウーファー「SRX918S()

Q. EQ設定などの調整はスムーズにできましたか?

非常にスムーズでした。スピーカー自体の素性が良いため、大きな補正は必要なく、会場の特性に合わせた微調整だけで済みました。内蔵DSPとアプリからのコントロールも扱いやすく、短い仕込み時間の中でも狙い通りの音へとスムーズに追い込めました。

Q. 出力されたサウンドの印象を教えてください。

一聴して、PAスピーカーであることを忘れるほどクリアなサウンドだと感じました。パワー感や明瞭度といったライブPAに必要な要素を高い次元で満たしながらも、決して耳障りにならない上質なサウンドが出力されていたのが印象的です。

PAシステム全体としての評価

マイクからコンソール、スピーカーまで、一貫して「色付けが少なく素直」という方向性で揃ったシステムであったため、ハイエンドオーディオ機器による音源との比較試聴を含む今回の企画には非常に適していました。私自身、機材への不安が一切なく、ミックスに集中することができました。
終演後には、お客様から「ハイエンドオーディオのスピーカーよりも色付けのないスピーカーだった」との趣旨のお声をいただき、一般社団法人 日本オーディオ協会の方からも「スタジオ録音のレコードをハイエンド装置で再生するのと遜色ないPAが実現できていたことに驚いた」と高い評価をいただきました。本システムの実力を証明できた、非常に意義のあるイベントになったと感じています。

『「空気録音の反復再生による室内音響の可視化」峯岸良行』

室内音響の特性を浮き彫りにする実験的な本セミナーにも峯岸氏が登壇され、DPA Microphonesのレコーディングマイク「4006」(無指向性)および「4011」(単一指向性)を検討・使用されました。

Q. 本セミナーの概要についてお聞かせください。

本セミナーでは、Alvin Lucierの代表作「I Am Sitting in a Room」(1969)に着想を得て、DPAマイクロホンを用いた空気録音の反復再生による室内音響の可聴化(=耳で聴き取れる形にすること)について紹介しました。 「I Am Sitting in a Room」は、話者の音声を部屋で録音し、その録音を再び同じ部屋で再生・録音する工程を繰り返すことで、言葉の意味が徐々に失われ、最終的には部屋固有の共振周波数のみが強調された音響作品へと変化していく実験的作品です。 本セミナーでは、この考え方を現代の録音技術と音響評価に応用し、DPAマイクロホンを用いて録音・再生を繰り返すことで、定在波や初期反射などの室内音響特性を強調・可聴化する試みを行いました。また、その音響変化が測定や評価だけでなく、芸術表現としても成立し得るかについて検証しました。

Q. どのように使い分けられましたか?

当初はDPA 4006を中心に検討していましたが、リファレンスとしていたAlvin Lucier作品の印象や、より直接音を捉えたいという意図からDPA 4011も使用しました。その結果、今回の実験では4011が良好に機能し、意図した音響変化を明瞭に捉えることができました。

Q. サウンドの評価はいかがでしたか?

実験用途として十分に有効なサウンドが得られました。また、反復録音によって室内音響の特徴が徐々に顕在化していく過程は非常に興味深く、音響研究としてだけでなく、芸術作品としても成立し得る優れた印象を受けました。

Q.実施にあたって苦労された点を教えてください。

Pythonプログラムによる反復録音システムの構築は必ずしも順調ではなく、試行錯誤を伴う進行となりましたが、その過程も含めて興味深い実験となりました。

プロフィール

Mine-Chang(峯岸良行 / Yoshiyuki Minegishi)
レコーディングエンジニア 作曲家 編曲家
2005年、BENNIE Kのプロデュースを手がけ、楽曲「Dreamland」がコカ・コーラ社CMに採用、アルバム『Japana-rhythm』はオリコンチャートで1位を獲得。作曲家としてLittle Glee Monsterや欅坂46などの作品に携わるほか、トヨタ、三菱、JT、任天堂などの広告音楽も手がける。
2012年よりprime sound studio form所属エンジニアとして活動、ミックスエンジニアとして多くのアーティストの作品に携わる。イマーシブサウンドテクノロジーをいち早く取り入れ、浜崎あゆみ・globe・TRFのベストアルバム群をはじめ、Snow Man、三代目 J SOUL BROTHERS、THE RAMPAGE、XG、アイナ・ジ・エンドなど多数のDolby Atmos Mixを担当。映画『パリピ孔明 THE MOVIE』の7.1chミックスを務める。近年はミキシングの経験を生かし、音楽スタジオの音響や音響機器の調整も行う。
名古屋芸術大学音楽領域サウンドメディア・コンポジションコース准教授